スプ子出所まで。

８月１６日火曜日の午後４時頃、猛暑のなか僕は動物愛護団体ＤＬＳ（ドッグライフセイビング）代表のＯさんと二人で世田谷にある東京都の動物愛護相談センターに行った。

８月３日に収容されたＥＳＳ（イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル）の女の子に会うためだ。
この子の収容期限は８月の９日になっていた。会いに行った時には期限を既に１週間も過ぎていたワケだ。。

実はこの子の情報は東京都の収容動物情報のＨＰに載っていたので、知ってはいたのだけれど、スプリンガーだし、写真で見てもかわいいし、たぶんどこかの愛護団体がすぐに引き出してくれるだろうと思っていた。・・・ところが引き合いは全く無かった。

収容時に撮られた写真

そしてＯさんから電話があった。

「あのスプリンガー、センターからうちに電話が来たわよ。引き取れないかって。」

僕はちょっと嫌な予感がした。
スプリンガーで遺棄。。
捨てられた理由を想像して、「果たして引き取れる様な子だろうか？」とスプリンガーに時々見られる例の症状について考えた。

激怒症候群。

もしセンターに居る子がこれだとすると、保護はいきなり難しくなる。
この病気は突然噛み付くことで知られている脳の病気だ。
病気なので、本人の気質とか性格とはあまり関係がない。
なので対応は大変なものになる。
僕はWEB上で国内・海外の症例レポートを読み漁った。。


我が家には２００８年の４月までの１３年間、スプリンガーの女の子が居た。
名前をリルビと言った。
僕が言うのも何だけど、リルビはとにかくかわいいスプだった。
あの子の他にあんなにかわいいスプは今でも見たことがない。
性格も器量も仕草も・・・何もかもがかわいかった。

僕はリルビを貰って来る時に激怒症のことは情報として知っていたので、ブリーダーさんにはブリードのラインに症例のある子が出ていないか聞き回った。
結果的にあるAMCHの父親と外産の母親の間に生まれたリルビに行き着いた。
おかげでリルビは激怒症候群とはまったく無縁の良い子だった。

なので、僕自身はこの病気に罹ったスプリンガーは直接知らなかった。


愛護センターの収容棟に入ると、エアコンが効いた部屋の中は外とは違い快適だ。
全ての収容されているイヌたちは、適切な空調と新鮮な飲料水と餌をもらって、少なくてもここにいる限りは清潔で快適な生活が約束されている。
東京都の場合はこの世田谷の本所も日野の多摩センターも同様の環境にある。

愛護センターで収容期限が過ぎた子は、ただちに「処分」されるワケじゃない。
収容期限＝飼い主の申し出期限だ。だから期限を過ぎた子は、翌日から「フリー」になる。つまり愛護団体などが引き取ることが可能となるワケだ。
ここで引き取り手が居ないと、イヌによっては適性を見た上で一般の里親募集をセンターの方でも行う。
更に適性不可（攻撃性があるなど）になってしまった子や、一般募集でも拾われなかった様な子は・・・悲しいことに処分が待っている。

それから、飼い主自身がセンターに持ち込んだ子は、初めから遺棄されたことが明白なため、本来は即日処分が原則だ。
だが実際には噛み付くという理由で持ち込まれたイヌでも、今ではいきなり処分ということはあまりない。（闘犬であるとか、人に酷い危害を与えたなどの明白な処分理由でもあれば別かもしれない）
僕自身、噛み付くということで持ち込まれたアメコカを引き出したことがあるけど、この子はまったく問題が無かった。元飼い主さんの経験不足とイヌを飼うための資質に欠けていたのだと思う。
そのアメコカもセンターの方からＤＬＳに相談があった。

僕たちがスプが収容されていた部屋に近づくと、スプ子は興奮してわんわん吠えた。
そして確認してみようと思っていた犬歯の状況について、はじめに担当の職員さんの方から「上下の犬歯が削ってある様です」と教えて頂けた。

「犬歯が・・・」やっぱりそうか。。おそらくこれを聞いた他の団体が引き取らなかったのは容易に想像出来た。つまりこれで僕らが諦めたら・・・この子は城南島送りだ。（城南島には処分場がある）

城南島のセンター・処分場

スプ子が居る部屋でしばらく様子を見た。お世話用の窓を開けてもらいスプ子を呼び寄せて撫でたり、歯を見たりした。（２枚上の写真）

かわいかった。

僕らはスプ子を出すことに決めた。

出所予定日は８月２５になった。。